上野駅のそばで、救急隊員たちが神輿のように男性を運んでいくのを目撃する。
とにかく、暑かった。こまめな水分補給で太刀打ちできる環境ではない。
見る者に、不安感や奇妙な印象を与える不思議な絵。広告の「不思議の世界へ、ようこそ」という惹句にそそられる。
パキッとした線と色使いは、秋の哀愁も、冬の孤独にも変化しそうだけど、熱帯夜に見る悪夢のようだ。
展示を見て、デ・キリコがダリやマグリットなど、のちのシュルレアリスムと言われる画家たちに影響を与えたイタリアの巨匠であることを知る。
シュルレアリスムの前身が、デ・キリコを中心とする形而上絵画(けいじじょうかいが=神秘的・幻想的絵画のこと)という認識でいいのかな?
見るからに奇妙な絵ばかりで(それが好きなんだけど)、どの作品もタイトルがまた不穏な印象を強めている。
この展示会でひときわ目をひいたのが、マカヌンの絵(マカヌンはマネキンの意味だ)
広告に使用されている絵のマカヌンには腕がなく、イーゼルの前に座っている。
イーゼルの向きから分かるように、それは描かれるためのモデルではない。
タイトルは、「預言者」。マカヌンには何が見えているのだろう。
人らしきもの(おそらくマカヌン)はいるのだけど、顔も性別も分からない鉛筆画には「貞淑な花嫁」と名付けられていて目が離せなくなる。それは狭い屋内にいて、よく見ると奥には開かれた扉。その向こうには外の世界が広がっている。
扉が開かれているにも関わらず、その狭い空間から動く気配がないから貞淑な花嫁、なのだろうか……?
2体のマカヌンがツーショットのように描かれた「ヘクトルとアンドロマケ」は、ポストカードを購入した。ヘクトルとアンドロマケと名付けられたマカヌンの作品はいくつかあって、帰宅後調べたらギリシャ神話に出てくる夫婦の名前であった。
キリコの絵に当てられたのか、はたまた暑さか。
韓国料理店に入ってラーメン入りのスンドゥブチゲを頼む。これ以上汗をかいてどうする。
なぜ冷麺にしなかったのか。思えば思うほど、煮えたぎるスープの色が、キリコの描くイタリア広場の塔にそっくりだった。