ポアロの目がひらいた。猫のような緑色の目。

先日、久しぶりにクリスティーを読んだ。『魔術の殺人』。

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やっぱり面白いなということになって、昨日は『オリエント急行の殺人』を満を持して読んだ。ポアロもの。

友よ。あらゆる階級、あらゆる国籍、あらゆる年齢の人が集まっている。これから三日間、この人々が、知らない者どうしが、一緒に過ごすことになる。ひとつ屋根の下で眠り、食事をする。離れて過ごすことはできない。その三日間が終わると、別れていく。それぞれの目的地へ向かい、おそらく、二度と会うことはない

「しかし」ポアロは言った。「何か事故でも起きればーー」

(中略)その場合は、たぶん、ここにいるすべての人が結びつけられることになるーー死という絆によって」

高級寝台列車ことオリエント急行が雪の影響で止まり、外と連絡のとれない閉ざされた空間で殺人が起こる。

SNSなどで不用意なネタバレを食らいがちといわれるクリスティー作品といえば『アクロイド殺し』が有名だけれど、本作もなかなか危なかったかも。

クリスティー作品の多くは犯人が分かった後でも楽しめはするけれども、まっさらな状態で読めてよかった。三谷幸喜作品とジョニー・デップが出ている実写版も見よう。

ハヤカワのクリスティー文庫で本文が始まる前に掲載されている内容だからネタバレに該当しないと判断してーー本作が実際に起こった誘拐殺人事件を取り入れているのは知らなかったし、驚いた。ままならない世界を、物語で慰める作品でもある。

ポアロの目がひらいた。猫のような緑色の目。静かな声で言った。

「さてと、しっかり推理しましたよ。あなたがたは?」

私の目標のひとつは、クリスティー文庫を制覇するということで、この調子なら年内にいけたりして……と調べてみたら100冊超えていて驚いた。

好きな作家が多作というのはうれしい悲鳴ではあるけれど。今5分の1程度か。

今週末は本を買いに出かけよう。