本屋にいると時間ってあっという間に溶けるよなー。
いくつか絞ったなかで、最終的にフランスの作家、ミシェル・ビュッシ、平岡敦訳の『恐るべき太陽』(集英社文庫)に決める。
作家志望の5人の女性が、人気ベストセラー作家の創作講座を受けるために島に集い、ひとりひとり消されていく長編ミステリー。
島での連続殺人という非日常シチュエーションがそそるし、背表紙のあらすじにある「クリスティーへの挑戦作」というのも決め手。
さらに立ち読みした冒頭の文章がよかった。
魚たちは眠っている。
死んでいるのでも、熱すぎる海のなかでぐったりとしているのでもなく、本当に眠っているのだ。
彼女は天然のプールに漂う魚たちをもっとよく見ようと、トレートル湾の端に突き出した黒いぎざぎざの岩に近づいた。
すっと物語の世界に沈んでいく、きれいな入り口だなと思った。短めのプロローグで不穏な着地を見せるのもいい。
本に挟まっていた新刊案内のチラシは数年前のもので、恩田陸の『鈍色幻視行』が著者近影とともに大きく紹介されている。
『鈍色幻視行』は、都内の大型店で取り置きしてもらったサイン本を受けとるまで「何か手違いがあって手に入らなかったらどうしよう……」と気が気でなかった1冊だ。
“呪われた本”を巡る関係者たちが豪華客船に集うという恩田陸ワールド炸裂の長編。内容からしても旅のお供にぴったり(?)で、文庫化が待ち遠しい。
思えば、そこに挟まれていた新刊案内のチラシで、『恐るべき太陽』のあらすじを読んで気になっていたんだよな、と記憶が蘇ってくる。
1ページに文字がぎゅっと詰まっているわりに、するすると読みやすい。結末にたどり着くのが楽しみだ。