書店はただ本を買う場所ではなく、知らない本に出会う場所。
という趣旨の投稿がSNSで話題になっていた。確かに欲しい本はネットで買えるけれども、知らない本は検索も購入もできない。
私は時間を忘れて、心持ちゾンビになったような気分で、じっくり書店内を散策するのが好きだ。
2、3周していくなかで気になった本をいくつか頭に留めて、最終的に1冊、欲に耐えられないときは2冊買う。
前の土曜日は、すでに次に読みたい本の構想があって、真っ先にその在庫を確認してゾンビになる。
1周目では気づかなかった。2周目で、ぎっしりと詰まった本棚の中から、1冊のタイトルが目に飛び込んでくる。
『愚か者の島』
手に取ってみる。表紙と帯を見て、ちょっと心拍数が上がる。
裏のあらすじを読んで、「あ、これ私好き系のやつだ」と確信する。
独自の自然主義に傾倒する元医師と不倫相手は、アダムとイヴになるべく無人島に入植する。
原始的な生活をはじめた元医師たちを取材したニュースをきっかけに、新たな入植者たちが現れ、人間の醜い本性が現れはじめる。
自分本位ですれ違っていく男女、逃亡中の殺人犯、子の不登校問題に悩む家族、島のリゾート開発を狙う金持ち。
楽園を求めたはずが、いつしか愚か者の島へとなり果ててーー。
むき出しのエゴとか欲望とか、内容的に気持ちのいい話ではないけれど、幕切れにほっと息をついて、不思議と空を見上げたくなる作品だった。
書店を散策しなければ。自分の目で見て、手に取ってみなければ、出会わなかった本ー物語ーである。そう思うと、やっぱり書店散策はやめられない。
誤算は、今週ゆっくり読み進めようと思っていたのに一気読みしてしまったこと! 面白かった!