三浦しをんのエッセイがめちゃくちゃ好きだ。
どれくらい好きかというと、読んでいて涙するほどだ(笑い転げすぎて)。
久しぶりに読みたいなと思って、本棚から『好きになってしまいました。』(大和書房)を取り出す。
2012年から2022年あたりに新聞や雑誌に掲載した、美容、旅、本にまつわるエッセイがまとめられている。
コロナ禍で入場者は半分、声出し禁止のコンサートに参加している様子もあって、笑いながらしみじみとしてしまった。
この本の中に「侵入者が一匹と一人」というエッセイがある。書きだしはこうだ。
帰宅して玄関のドアを開けた一瞬の隙に、ちっちゃなトカゲが私の足もとをすり抜け、屋内へ侵入した。なっ、おまえと一緒に帰宅したつもりはない!
意図せず始まったトカゲとの同居生活。いつ同衾を申し入れられるのかドキドキしたり、トカゲ氏も「寝室はべつにしたい派」であることを祈ったり、爬虫類が苦手な身としては笑い事ではないのだけど、いつ同居を解除できるのかニヤニヤしながら読んでしまう。
このオチ(?)をかっさらうのが、一匹ではなく一人のほうの侵入者である。まさかのラストで、突如始まったトカゲとの同居生活以上の笑いが待っているとは思わなんだ。いやー、まいったまいった。
本書のまえがきにて、エッセイを書くことについて、三浦しをんはこう言っている。
エッセイは私にとって、外づけハードディスクみたいなものなのかもしれない。脳の記憶容量におおいに不安がある身なので、せっせとエッセイに記録しておくのだ。
毎日が楽しいわけではなくても、何気ない日常をこうも面白く書けたら、幸せを感じるアンテナは人より多く受信できそうだ。