やっぱりクリスティー、安心して読める。
ABCの謎を解決するにあたって、ただひとつ言えるのは、これまで遭遇したいかなる事件ともまったく異なる問題に取り組むにあたって、ポアロが真の天才を示したということである。
名探偵ポアロに届く殺人予告。イニシャルがA、B、Cの順に人が殺されていく。被害者同士に関連はなく、事件現場の地名もA、B、Cと頭文字順に並んでいる。異常な連続殺人の結末は?
作家、中山七里のミステリーならこれ読んどけの選書にも含まれていた『ABC殺人事件』。いやー、鮮やかでした。
本作は、ポアロの友人、ヘイスティングズが書きしたためた記録という形式をとっている。
あなたの運命は、わたしのそばにいて、わたしが許しがたいあやまちを犯すのを防ぐことなんです
ヘイスティングズは、ポアロにとって気の置けない友人であり、行き詰ったときにひらめきを与えてくれる存在。ホームズにワトソンみたいな、バディものとしても読める1冊。
「つまらないことによく気がつく人ですね、あなたは、ポアロ。ほかの人が着ているものなんか、わたしはぜったいに気がつきませんよ」
「あなたはヌーディスト・クラブにでも入ればいいんです」
友達同士の軽口に、ふと和んで、リラックスしながら事件を追える。
最近SNSで見かけた感想に、クリスティーは愛か金かの動機がほとんどだけど、物語に性的な雰囲気を感じられないから好きというのを見かけて深く納得してしまう。
ファンタジーというほど遠すぎず、現実ほど生々しすぎずの塩梅が、「安心」という読後感に繋がっているのか。
うーん、勝手に燃えてきた。今年の目標、クリスティー文庫読破しちゃうか。