猟奇殺人者VSヒロイン(個人)がお好き

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先日、作者買いしたトマス・ハリスの『カリ・モーラ』。美貌のヒロインが、麻薬王の残した金塊の奪い合いに巻き込まれ、猟奇殺人者の妄執の的にもなってしまうサイコ・スリラー長編。

かのハンニバル・レクター博士の産みの親ってことで、こちらも古い作品かと思っていたら、令和元年(2019年)に新潮文庫から出ていて驚いた。

評判的には物足りなさからビミョー…という向きもあるみたいだけれど、ショッキングが苦手な自分にはちょうどよかった。まあ淡々としているから読めるだけで、人体液化装置だ人喰いワニだグロテスクのオンパレードではある。

主な登場人物たちはアウトローなのに、意外と人情味があるのもよかった。生きるか死ぬかの極限状態だから余計に、人が人を思いやる気持ちにグッとくるのかもしれない。

しかしきっとああいう世界では、グループ以外の人間のことはどうでもいいんだろうな。子どもたちが大はしゃぎして遊んでいるノリで、ゲラゲラと命が奪われていく。

読みやすい文章というのもあるし、猟奇殺人者VSヒロイン(個人)という構図に弱いというのもあって、しばらく寝かせたら再読したくなりそうな1冊だ。

ハリス、新作出さないかな……。