ケイティ・ブレントの『男を殺して逃げ切る方法』を読んだ。
主人公は29歳の美人で裕福なインフルエンサー、キティ・コリンズ。華やかな生活を送っている裏で、女性を傷つける卑劣な男たちに正義の鉄槌を下すシリアルキラーでもある。
とある紙媒体の書評で知って「おもしろそう!」と即買いした1冊。英国で15万部を超えるヒット作で、ジャンル的にはブラックユーモア満点のラブコメ犯罪もの……? ミステリーやサスペンスとはちょっと違うかなあ。『男を殺して逃げ切る方法』という、ハウツー的なタイトルもクスッとする。イケてる。
クレイジーなキティの一人称視点というのもあって、最初は物語にというより、彼女の頭の中についていくのに精一杯だった。
ぐわっと先が気になる感じでもなく「ちょっとあの書評……持ち上げすぎじゃないの?」と途中で疑いもしたが、読み終わってみるとキティの“逃げ切り”をもっと見ていたいような、親しみがしっかりと芽生えていた。
それは、彼女の内面が矛盾だらけで、それがとても人間らしく思えたからだ。
極端な性格ではあるけれど、ひどい男を滅ぼしたい気持ちと、ただひとりの男性に愛されたいという欲求とか、彼女のなかには相反的な思いがたくさんある。そのド派手なマーブル模様が、むしろ憎めない人間らしさに繋がっていると思う。
そしてやはり、女性がクズ男をぶちのめす展開は痛快である。悲しいかな、ティーンの妄想にしかないような正義の鉄槌ぶりは、現実のままならなさを晴らしてくれる。
お金持ちで美人のインフルエンサーが、凡人には持ちえない財力や掌握術でひどい奴らをやっつけて逃げ切る。やっぱり最高のあらすじじゃないか?