不穏な洋館と異常な連続殺人と

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赤川次郎の『マリオネットの罠』。いわくありげな古びた洋館もの、大都会を騒がす異常な連続殺人鬼もの、と一粒で二度おいしくて、ものすごーく面白かった!

3ヶ月で100万というおいしいアルバイトのため、古びた洋館に住み込みで家庭教師をすることになった大学院生、上田修一。

仕事のために学びたいという美しい姉妹にフランス語を教える日々。日常を離れた贅沢な時間ながら、不穏さが隠し切れない。そして修一はついに、驚くべき秘密を知ってしまう……。

ここで文春文庫の裏表紙のあらすじを全文引用する。

“私の事を、父は「ガラスの人形」だと呼んでいた。脆い、脆い、透き通ったガラスの人形だと。その通りかもしれない”……森の館に幽閉された美少女と、大都会の空白に起こる連続殺人事件の関係は?錯綜する人間の欲望と、息もつかせぬストーリー展開で、日本ミステリ史上に燦然と輝く赤川次郎の処女長篇。

このあらすじからは予想もできない、まさかまさかの連続で、こんなにゾクゾクとする異常な連続殺人が読めるとは思っていなかった。犠牲者の数は10人以上。

赤川次郎というとコミカルなミステリーの印象が強かったのだけど、読みやすさはそのままに、不穏と恐怖に満ちた長編サイコサスペンスだった。

作品名でネタバレになってしまいそうなので伏せていうと、クリスティの有名作品を読んだときの衝撃に近い伏線。「え~! そういうこと!」と急いで読み返しても、自然に溶け込んだ思惑に震えてしまう。人間、こわい。

3月ながら、今年読んだ小説マイベスト10に入りそうな勢いの1冊だった。

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