出会うべきタイミングでやってきた本

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本には、出会うべきタイミングでやってくる、ということが時々ある。

書店や図書館でたまたま目に入り、気まぐれに手に取ったはずの1冊。予言の書かと驚くほど、今の自分に必要な言葉が詰まっている。そんな本との出会いは、紙の書籍ならではかもしれない。

水辺に並ぶカラフルな建物のイラストカバーに惹かれて手に取った『明るい夜に、星を探して』が、そうだった。ページを開き、飛び込んできた冒頭の一文。

今日も惰性で生きてしまった。

自分の今をズバッと言語化されたようで、妙に泣きたい気持ちになった。

ページをぱらぱらとめくり、若い女性が書いた北欧1人旅のエッセイ本らしいという情報だけをインプットして、週末の昼下がりのお供に決めた。

著者は新卒で入った仕事を半年で辞め、社会には馴染めなかったけど誰かと繋がっていたいと始めたYouTubeをきっかけに文筆活動を始めたという。

傍から見たらSNSで才能を開花させて華やかに転身、という風に思うけれども、当本人の胸の内は複雑だ。

久しぶりにログインしたInstagramで同窓会にも友人の結婚式にも自分が呼ばれていないと知ったこと。そもそも友人たちは結婚や出産を経て、着実に人生を進めているのに、自分は何も変わっていないという焦り。

とにかく人と関わろうと参加した合コンや異業種交流会では空まわりをして、繋がりたいのに馴染めない息苦しさ。

共感、というと少し恥ずかしいけれど、私にも覚えのある痛みが文章から伝わってきた。

「仲間」に憧れているのに、交ぜてと言えないままの大人になってしまった。ゲームなら、一度ボタンを押すだけで会話が始まるけれど、現実はそうもいかない。誰かが声をかけてくれるのを待ち続けて、結局一人のままなのかもしれない。

そんな著者が、20代最後の年に、勢いだけで日本を飛び出す。2週間の北欧1人旅。

一緒に旅した気分になるとか、トラブル続きで応援したくなるとか、月並みな感想は色々と出てくるけれど、彼女が旅を通して腑に落ちた“当たり前”が、何より胸をあつくした。

頭では分かっている知識が、体に染み込んで実感に変わる瞬間みたいなもの。物事を世間の常識に当てはめず、自分の言葉で語ることができるって、つよくてきれいだ。

それにしても、ちょっとよさげなホテルにクルーズ、ツアーにスパと、予算底なしかという日程が羨ましい。

そして著者をYahoo!検索して、アイドルみたいな子が出てきてさらに驚く。お酒とジャンクフードにまみれた日常、というイメージから勝手に作り出していたイメージと180度違って、親近感を覚えていた自分を穴蔵に隠したくなった。

アンコンシャスバイアスはよくないけれど、もしもこの本の横に著者近影が飾られていたら、「自分とは住む世界の違う人」と、手に取ることもなかったかもしれない。

そんなタラレバを頭に浮かべながら、「この本は出会うべきタイミングにやってきたのだ」と、満足感でいっぱいになって週末が終わる。