
この頃、やけに「書くこと」に関する新刊が多いと思うのは、SNSが私の興味関心に最適化されているからだろうか。
新刊ラッシュとは別に、タイムラインのおすすめに出てくるのが、「有栖川有栖川」関連の話題。ムック本の発売で界隈が盛り上がっているのもあるだろうけれど、やっぱり彼の名前を見かけるとついスクロールを止めてしまう私に最適化されている気がする。
クリスマスの別荘に集うミステリー作家と殺人という垂涎ものの長編『46番目の密室』から始まる臨床犯罪学者・火村シリーズ。久しぶりに、順番どおりに読み直したくなって、次作の『ダリの繭』を手に取った。
シュルレアリスムの巨匠、ダリを愛する宝石チェーン社長が、別荘宅で殺害される。
彼は、真っ暗闇の中で瞑想するフロートカプセルの中に浮かび、そしてトレードマークだったダリ髭がなくなっていた。
紹介文に「究極のパズラー」とあるだけあって、ピースが鮮やかにハマっていくラストは気持ちがいい。
「そんなことがあるだろうか」という部分もなくはないけれど、唯一解き明かせない謎があるとすれば、それは人の心で、こうあるべきという正解もないのだろう。
何気ない文章のなかで、人間の機微を感じさせてくれるのも、私が有栖川有栖川作品を好きな理由だ。
「あんまり見つめるなよ。新婚ごっこはもう終わりだぜ」
そして、このシリーズの探偵と助手の気の置けない関係は、ブロマンス的であり、「こんな親友が欲しかった」という憧れを抱かせる。
徹夜明けに用意されている朝食や、心配のあまりじっと顔を見つめてしまう仕草。本作の見どころのひとつ(?)である新婚ごっこは、なにもLOVEというわけではなく、相手を思いやるからこそ自然に生まれてくる。その関係性や空気が好きだ。
そしてそれがものすごく羨ましい。
話は逸れるが、ダリと宝石チェーン社長と私は同じ誕生日である。真相や犯人はほとんど覚えていたのに、この部分だけ「そういえば、そうだった!」と新鮮な驚きがあった。シュルレアリスム好きとして胸がときめくシンクロニシティだ。
