とどのつまりは金か愛か

つくづく、お金に困らない暮らしがしたい。

昨日は年末、初めて夫婦揃って帰省するための飛行機を手配した(結婚1年目)。

私ひとりであれば、中途半端な平日を狙って安いチケットを取れないこともないが、会社勤めの夫に合わせるとなると、跳ね上がる料金が倍どころの話じゃなくて気持ちが塞いでしまった。

お金のことばかり考えるのは嫌だ、という気持ちと、お金さえあれば全部解決なのに、という気持ちがぐるぐるしている。

人間というものは、お金のためなら、どんなことでもやりかねないものですからね

昨日読み終えたアガサ・クリスティーの『魔術の殺人』。非行少年の更生施設を運営する大金持ち夫婦の大きな邸宅で不可解な殺人事件が起こる長編ミステリー。マープルもの。

クリスティーの何が好きって、人間ドラマもそうなんだけど、富裕層の華やかな生活に心躍る。食後に暖炉とピアノのあるホールで思い思いに過ごしてみたい。

ちなみにタイトルから受けるオカルティックな雰囲気はなくて、原題だとThey do it with mirrors。なぜ日本語だと『魔術の殺人』なのかは、いまいちピンとこなかったな。ただ、読んでみたら意味は分かる。

本作の大金持ち夫婦は、意外と暮らしぶりに慎ましい一面もあるんだけれど、結局情熱を燃やす非行少年の更生事業だって、潤沢な資産があってこそなんだよな。うーん、やっぱりすべてはお金なのか。

それとも愛か? クリスティーの面白いところは、どの作品も究極の人間ドラマで、とどのつまりは金か愛かという話に集約される。

登場人物が多い割に、すぐに人間関係が飲み込めるのも、それぞれの個性というよりは人間関係においての立場・役割でバランスよく配置されているからだろう。

美男美女が多いのも見ていて(読んでいて)楽しい。全体的に分かりやすく、サービス精神が旺盛なのだ。

『魔術の殺人』でハヤカワのクリスティー文庫は約20冊目。暫定でトップ3かといわれると悩むところだけど、10位圏内には食い込むおもしろさ……というか、好き具合だった。