一穂ミチの『イエスかノーか半分か』(ディアプラス文庫)を読んだ。
数年前にBL小説人気ランキングの年間1位をとったのは記憶していて、けどカップリングが自分のシュミじゃないんだよな、と思っていたもの。
けれど、Kindle Unlimitedにあるならちょっと読んでみようかという気になった。一般文芸で直木賞を受賞されたのも記憶に新しいし。
受けは美貌の若手アナウンサー。外面は人当たりの良い王子様キャラだが、内面は「愚民め」と毒づく口の悪い性格。取材先で知り合ったアニメーション作家(攻め)に、そんな素の状態で遭遇してしまいーー。
読みだしてすぐ思ったのは「うまいなあ~」ということ。さすが年間ランキング1位、そしてさすが直木賞作家。
するっと主人公の内面に入り込める文章。極端な性格をしていても、キャラクターとしての破綻はなく、テンポよく進んでいく割にこじつけ感もない。気持ちのいい読み口だ。
単に受けと攻めのビジュアルや組み合わせ、展開を楽しむのではなく、面白い小説を読んだ、という満足感があった。
以下、タイトルの意味にまつわるあとがきを引用する。知りたくない方はここで閉じてほしい。
ワンクッションとして、過去に書いた「好きなBL作品語り」のリンクを貼っておく。
イエスかノーか半分か、という謎の選択肢を、子どもの頃よく用いていたような気がします。半分って何だよ、という話ですが、大人になった今、白黒つけちゃうとどちらにも角が立つ局面も多く、「半分でお願いします」と言いたい時もあります。
愛だ恋だを数値化することはできないけれど、この「半分」という言葉がいじらしく見えたり、合わせて2倍以上になったり、中途半端だと怒りの原因になったり、1冊を通して人の心の不思議さと愛おしさが伝わってくる。
そして、きれいなばかりでなく「半分だけ」という下ネタをぶっこんでくるあたり、末恐ろしい作家だ……!