『小説を書く人のAI活用術 AIとの対話で物語のアイデアが広がる』(山川健一、今井昭彦、葦沢かもめ/インプレス)を読み終えた。
AIとの対話で進む創作というのが、SFのような、近未来の「職業:作家」の話を読んだような気分。
「今」の話というのだから、驚きというより不思議な感じがする。
小説を書くことは芸術か?ビジネスか?
1冊まるっと読み切ってみて、AIを活用した面白い小説というのは、今後確実に出てくるだろうなと思った。
小説をエンターテインメントのひとつとして捉え、商業的に成功するというベクトルに、AI活用はものすごくマッチしている。
けれど、自分が果たしてそうやって作家になりたいか? と言われると首をかしげたくなる部分もある。
心の奥でくすぶっている「書きたい」という気持ちは、商業的成功で満たされる類のものではないと思うからだ。
けれど、自分の作品をより深く、面白くしたいという作家の純粋な想いにも、AIは力になってくれるだろう。少し前に新聞で読んだ作家のコラムに、AIに自作のイメージを作ってもらうのが楽しいと語っているものがあった。
紛れもなくAIは超優秀な最新ツールであり、何となくの拒否感だけで遠ざけてしまうには惜しい存在だ。
AIで小説を書くにしても面白くなるかは「私」次第
ChatGPTがうまく動いてくれないのは、私がやって欲しいことをきちんと言語化できていないからだと気づいたのです。 AIと協働するうえで大切なのは、まず「自分がして欲しいことを知る」ことです。
だが決定的にChatGPTに欠けているものがある。「何が書きたいのか?」「なぜ書きたいのか?」という設問に、彼は絶対に答えることができないのだ。
AIはあくまでツールに過ぎず、物語の出発点は「私」の中にある。
「書きたいこと」をAIとの対話で少しずつ引き出していく行為は、自分の内面と向き合い、さらけ出すことに近い。
ChatGPTに正確な指示を出す言語化する能力はもちろんだけど、結局「とにかく、書きたい人はいっぱい読むべきだよね。」という場所に本書も行きつく。
効率はあっても、近道はないということだ。