天才であるより、いい人であるほうがずっといい

「天才であるより、いい人であるほうがずっといい」

昨日の夕刊で見つけた。

アンパンマンの生みの親、やなせたかしの言葉で、彼と交流のあったノンフィクション作家、梯久美子のコラムに登場する。

この言葉が正しいとかではなく、そういう考え方をできる人って素敵だなと思う。

アーティストたちの卵に向けた言葉だと思えば、尚のこと。ヒナがすくすく育つのを見守るような、やわらかさとあたたかさを感じる。

とはいえ、いい人であることもそう簡単ではないだろう。コラムの言葉を借りて、「いい人=一生懸命さ」と考えると、努力に勝る何とやらだ。

好きだから、一生懸命になる。

この生き方が理想なのかもしれない。先日見た映画『ブルーピリオド』(藝大合格に向けて絵に打ち込む青年の物語)を反芻しつつ、「できるからではなく、好きだから」と打ち込む人を応援したくなる気持ちは、誰の心にも自然に湧いてくるものなのかもしれない。

同じく日経の夕刊で連載中の有栖川有栖作品(『折れた岬』)のなかでは、ミステリー講座を務め終えた主人公が、受講者に向けてこんな言葉を贈っている。

作家を志望している方は、どうか自分が読みたいと思う作品を書いてください。書けるから楽しい、楽しいから書きたいではなく、作者自身が読みたい作品が書きたい作品でなくてはなりません

「好き」ありきで書かれる作品が読みたい、という作者自身の気持ちも反映されているような気がした言葉だ。

引用したどちらの言葉も、ある意味で才能を言い訳にせず、好きなことに打ち込んでみてほしいという先人たちの温かい眼差しを感じる。

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