新聞を読んでいて「ウェルネス疲れ」という言葉に出会う。
本来、ウェルネスは健康や幸福を目的として、よりよく生きようとすることを指すが、情報過多に振り回された結果、疲弊している若者が増えているというのだ。
その記事では、よりよく生きようとする理想のなかで取りこぼされた人間的欲求が、ホラー系映画の増加や激辛料理など、“反ウェルネス”的な流行に繋がっているのではないかと指摘する。
結局、お手本のようなよりよい生き方も選択のひとつであり、正解ではないのかもしれない。
そういえば、今読んでいる中山七里の『超合理的!ミステリーの書き方』(幻冬舎新書)で、「面白いものしか見たくない、という風潮はどうなのか」という指摘も印象に残っている。
ネットで評判を確認して、十人のうち八人が「面白い」というなら読んでみよう、とか、観に行こう、とか。逆に評価が低かったら避けようとする傾向がありますね。それを続けていたら、その人が面白いものを作る能力はかなり限られてきますよ。
タイパで効率を求め、よいものだけを摂取することが、必ずしも人間的によりよくはならないということだろう。
ふるいの目からこぼれ落ちるものにこそ、人間として生きる意味があるのかもしれない。