愛の逃避行を選んだ花嫁が大渋滞にはまる

海外のことわざにありそうなブログタイトルだな。いざ決断してもままならない、みたいな。

しかもその大渋滞の原因が実は……(後半に続く)

週末、劇団 山田ジャパンの舞台『大渋滞2024』を観てきた。

高速道路で謎の大渋滞が起こり、立ち往生したドライバーや同乗者たちの間でひとときの交流、疑惑、そして連帯感が生まれる群像劇だ。

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舞台は天井や一部のタイヤが取り除かれた実際の車体が並んでいる(※撮影OKだった)

幕が上がり、ひときわ目を引くのがウェディングドレス姿の花嫁だ。彼女は助手席にいて、運転席には沈んだ表情の青年が私服で座っている。一向に動く気配のない車から降りてくる周囲の人々は興味津々だ。

しかし花嫁と青年が主人公、というわけではない。そのほかの車両には売れない役者とマネージャー、恋愛絡みで空気の悪い3人組バンド、かたや公務員、かたやスナックのママという腹違いの姉妹、黒ずくめの車体から姿を見せようとしないいかにも怪しげな男。濃いメンツのそれぞれの人生にスポットがあたっていく。

公式のあらすじにある内容なのでネタバレに該当しないと判断して続きをいうと、この謎の大渋滞には1件の殺人事件が絡んでいる。

逃走中の犯人を逃さないために、高速道路が完全に封鎖されているのだ。しかもその真犯人がとても意外な人物でーー。

運悪く渋滞にはまり、隣り合った人同士で非日常の交流が生まれるというだけでも舞台の設定としてはそそられるが、そこにミステリー要素が絡んでくるとは。あらすじだけで好物と感じてしまうのは私だけではないはずである。

山田ジャパンの舞台はこれで4作目で、つくづく笑いと毒は紙一重なのだと感情が忙しかった。

それにしても、うまいものだ。高速道路と人生の親和性。どちらも進み続けるしかない。

人生でいえば、それは時に容赦のないことで、終わりたくても簡単には終わらせられない。そこに一筋の光のように差し込むのが、結局「人生とは」を煮詰めて残るものなのだ。

そしてこれが舞台と映画の違いなのだろうけど、観劇後の余韻は地続きで、自分の生活、明日へと繋がっていく感覚がある。演技とはいえ、生身の人間が目の前で成長していく姿に、力をもらはないはずがない。

まわしものではないが、『大渋滞2024』は9月29日(日)まで赤坂の劇場で公演中だ(もしかすると当日券も残っている、かも?)。

最終日はアーカイブ付きの生配信もされるそうなので、気になる方はぜひ。