2024年9月は、6冊の本を読んだ(Kindle Unlimitedなどでざっと読んだ本は除く)。
ダントツで面白かったのは、エリック・ラーソン 、野中邦子訳の『万博と殺人鬼』(ハヤカワ文庫NF)。
アメリカ最初のシリアルキラーと呼ばれるH・H・ホームズの事件と、建築家ダニエル・バーナムを中心に計画がすすむシカゴでの万国博覧会を折り合わせたノンフィクション。
「現実は小説よりも奇なり」を地でゆく面白さで、特に性別問わず人の心をいともたやすく射止めてしまうホームズの悪魔的魅力は、怖いけど見ない(読まない)ではいられない。
同じくハンサムで魅力的な青年バーナムとの対比で、より色濃くホームズの闇が炙り出されていた。
『万博と殺人鬼』がダントツと言っておきながら、恩田陸の『酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記』(講談社文庫)も、ものすごーく面白かった! 毛色が違うので、同じ枠では語れないのだ。
飛行機嫌いの恩田陸が移動の恐怖に耐え、イギリスとアイルランドを巡る紀行エッセイ。後半は日本各地のビール工場を巡っている。
とにかくビールが飲みたくなる内容(恩田陸は生粋のビール好き)というのと、彼女がいかに物語を創作しているのか、旅のなかでインスピレーションが生まれる瞬間とはどんなものかを垣間見ることのできるファン垂涎ものの1冊。
昭和を代表する女性推理作家、夏樹静子の『往ったり来たり』(光文社文庫)はKindle Unlimitedで見つけて読んだエッセイ。紙の本で購入希望!
「ミステリーの女王」「日本のクリスティー」と呼ばれる大作家の日常エッセイは、作品の印象とがらりと変わって、家庭を守るごく普通の主婦といった雰囲気のギャップにやられる。感想文も書いた。
恩田陸もそうだが、ミステリー作家の書くエッセイにつくづく弱い。舞台裏が覗けた気分になるからだろう。