
※江戸川乱歩『悪霊』のネタバレ……というか考察(という名の妄想)入ってます!
「一人美しい人が死にました。そして、又一人美しい人が死ぬのです」
『悪魔の紋章』に続いて、青空文庫の江戸川乱歩作品「あ行」に並んだ『悪霊』を読み始めた。
……いや、『悪霊』って未完なのかいっ!
幸い、まだ序盤といえるところでぶっつり終わっていたから傷は浅い。
けれど、降霊術をおこなう心霊学会の美しい未亡人が謎めいた死を遂げるという導入や、ミディアム(霊媒)が殺人を予告するオカルティックな展開がとっても面白そうなだけに、続きを読めないのはとても残念だ。
君も知っている様に、先生の風采は少しも学者らしくない。髭がなくて色が白く、年よりはずっと若々しくて、声や物腰が女の様で、先生の生徒達が渾名をつける時女形の役者を聯想したのも無理ではないと思われる。
特に、降霊術グループの中心的存在である“先生”こと黒川博士。浮かび上がる美形紳士ぶりに胸のときめきがおさまらないのだが。
僕が矢絣の女というと、先生は何ぜか一寸赤面された様に見えた。先生が顔を赤らめられるなんて非常に珍らしい事なので、僕は異様の印象を受けたが、その意味は少しも分らなかった。
殺人現場に出入りしたとおぼしき謎の美しき女性(紫の矢絣を着ている)って、変装した黒川博士だったんじゃないのと想像している。
イケてる黒川博士と不倫関係にあった女性、という線もあるけれど、乱歩的にも個人の好み的にも、博士が美女に化けたと考えたほうが妖しくて好きだ。
そして、これは誤読が明らかなのだけど、ミディアムの盲目少女が次に殺される相手を予言するところ。
<わたしの前に腰かけている、美しい人です>という予言に、それって黒川博士のことじゃん! とひとり盛り上がったのだけど、これは18歳になる博士の娘さんを指していると考えたほうが無理がない。
そういうミスリードで博士ってこともあるやもしれぬが(もしくは奥さん)、前後の文脈的に娘さんで間違いないだろう。
黒川博士と幼馴染みの熊浦氏がまた魅力的だ。所帯を持たず厭人的な妖怪博士で、<紫の矢絣の女>について何か思うところがあるらしい。
それを聞くと会員達は皆ハッとして話手の鬚面を見たが、殊に黒川先生は顔色を変えてビクッと身動きされた。
熊浦氏が夜の散歩中に見たという<紫の矢絣の女>。
さらに、語り部の「僕」に、黒川博士の奥さんの箪笥の奥に紫の矢絣があったとこっそり告げるところが意味深だ。なぜ博士の奥方の箪笥の中身を知っている。
つくづく、おもしろい予感しかないのに!
『孤島の鬼』を生んだ大先生だもの。黒川博士の挙動のおかしさには、倒錯的な理由があっても不思議じゃないよね。
