
『ファーストキス 1ST KISS』っていうんですけどね。松たか子×松村北斗出演。坂元裕二脚本。
正直、これまでは予告編を見かけても「ふ~ん」と流すジャンルだった。けれど、「夫婦で見るべき」「離婚率はおろか、成婚率が上がる」という熱い感想をSNSで見かけるにつけ、これは夫を近くのイオンシネマに引っ張って見に行かねばという決意に変わった。
離婚寸前だったある日、事故で夫を亡くした主人公。ぽっかり穴のあいたような日々を過ごしていると、ふたりが出会った15年前にタイムスリップできるようになる。そして主人公は何度もその日を繰り返し、彼が死ぬ未来を変えようと奮闘する。
くっそ。エンドロールが短すぎである。口を開いて舌を突き出した間抜け面をすると涙が引っ込むを実践してみたけど、この作品を前には無理である。
無情にも座席がパッと明るくなり、肝心の夫にはしばらく腫れ物に触るような扱いを受けた。すぐさまトイレに駆け込んだら、自分でもドン引きの泣きはらし具合である。泣くと頭痛がする質で、もう最悪だ。
いや、これにはワケがある。前日、好きな書き手がちょうど『ファーストキス 1ST KISS』の記事を書いていて、読むのはまずいよな……と思いつつクリックしてしまったのだ。
すると、冒頭にある目次がざっと目に飛び込んでくる。ネタバレというほどではなかったのだけど、映画の中盤で「そういうことか」とピンときてしまって、その後40分近くもはらはらと泣いていたらこうもなるさ。
「映画館で見るべき」。公開中の映画によくある感想だ。正直なところ、私も夫も、派手なアクションや音質がものをいう作品ではない限り、「配信待てばよくない?」と思ってしまうタイプである。
しかし、今の時代だからこそ、『ファーストキス 1ST KISS』は映画館で見るべきだ。
部屋でまったりくつろぎながら、スマホ片手にながら見するのでは見逃すものが多すぎる。この映画は“瞬間”なのだ。瞬間の積み重ね。
まさに今生まれようとする氷の結晶を見守るような気持ちで、目をそらさずにいたい。映画館の外では、あまりにノイズが多すぎる。
帰り道、なぜ手を繋ぎたくなったのか。作品の余韻であることは間違いなく、けれど甘い雰囲気とも程遠く。
存在と瞬間とでもいうのか、打算や理屈を抜きにして目の前にいるその人を見つめたくなる。そんな作品だった。