2日前の『ファーストキス 1ST KISS』で号泣したのが記憶に新しく、今回もうんと泣く覚悟で挑んだ映画『ドライブ・イン・マンハッタン』。
ダコタ・ジョンソン、ショーン・ベン出演。回想シーンなどは一切挟まず、タクシードライバーと客の女性が車中で互いのことを話して終わる作品。
女性は、既婚者と知りながら年上男性と交際している。彼女の何気ない言動からそれを見抜いたイケオジドライバー。かつては自分もそうだったと、男側の視点で語りかける。
次第にふたりは打ち解け、衝突し、目的地まで刻一刻と近づいていく。
興味深かったのが、ドライブシーンの車内のみで構成された映像が心理的に働きかけるのか、途中でトイレに立つ人多数だったこと。そしてエンドロールが流れ始めた瞬間に慌てて立つ人の多さ。空間が明るくなった瞬間、私たち夫婦もとにもかくにもまず「トイレ!」だった。
響きがちょっとイヤだけど、なぜかトイレが近くなる作品である。
そして意外にも、用意したハンカチの出番はなかった。面白くなかったとか、感動しなかったというわけではなくて、むしろ顔のパーツが中央にきゅっと寄るような作品だったからだ。
端的にいうと、それはイイ話ではなくて、人生の話だった。ドラマチックではなく、ありふれた現実(リアル)。紙やすりのようにザラっとした質感で、ついきゅっと顔をしかめてしまう。
それはちょっと虚しくて、でもそう簡単に変わらないという安堵も含み、それが妙に切ない。性別や世代によって、大分後味が変わりそうな作品だった。